通訳学校で進級できない理由:4つの壁とクラス別の傾向

通訳学校で進級できない理由|4つの壁 通訳訓練・技能強化

現役社内翻通訳者のYです。<詳しいプロフィールはこちら>
私は現在サイマルアカデミーで学びつつ、製造業(自動車)の現場で社内通訳として働いています。

課題提出も真面目にこなし、授業にも積極的に参加しているのに、
いざ進級試験では結果が出ない──。

通訳学校では、こうした “実力と結果のギャップ” に直面する人が少なくありません。

私自身、なんとか3回連続で進級判定をもらえていたものの、逐次通訳のIC3で初めて再履修判定を受けました。

当時は処理速度や再現精度の限界を感じていて、スランプとも重なり、正直、当然の結果だったと思います。

私自身もその経験をしたばかりなので、改めて“なぜ進級できないのか”を深掘りしてまとめておこうと思います。

ここでは、話し手が発言をある程度のまとまりで区切った後、通訳者がその内容を通訳して伝える逐次通訳に焦点を当てていきます。

記事の概要

通訳学校で進級できない理由を、実際の授業体験から 4つの壁 に整理。
特に「処理速度・記憶保持・引き出し不足」が進級を分ける核心だと感じています。
さらに、クラス別のつまずきやすいポイントや改善のヒントを具体的に解説します。

この記事はこんな方におすすめ!
・これから通訳学校に通う予定で、リアルな難しさを把握しておきたい方
・通訳学校で進級できず悩んでいる方
・通訳訓練で「なぜ結果が出ないのか」原因を知りたい方
・処理速度・保持・ノートテイキングに課題を感じている方
・再履修を前向きに捉えたい方

通訳学校まわりの全体像を知りたい方は、通訳学校について一気にわかる案内板 で関連ページを一覧できます。

通訳学校の進級はなぜ厳しいのか

通訳学校のクラス構成は、上位になるほど人数が減っていく“ピラミッド型”。

通訳準備や初級逐次クラスには12人ほどいた受講者が、上位のクラスでは半分以下になることも珍しくありません。

授業内での評価や期末試験は、単なる「理解度チェック」ではなく、「通訳者として通用するか」を見極める選抜の場

努力していても、通訳者としての伸びしろが示せなければ進級は難しい──これが通訳学校という場所の現実です。

(関連記事: 通訳学校の進級システムを徹底解説

通訳学校の進級でぶつかる「4つの壁」

「話せない」「聞けない」「処理が追いつかない」。

これらは別の問題のように見えますが、実は密接に関係しています。

私は通訳学校での体験と、クラスメイトのつまずきを見ていて、進級を阻む要因は、次の4つに整理できると感じています。

① 音の壁|単語・速度・集中が追いつかず「聞こえない」

リスニングは“構文処理”が鍵になります。

「聞き取れているつもりなのに、いざ通訳するとなると崩壊する」

これは非常に多いパターンです。

よくある原因:

  • 単語・表現が不明
  • 速度が速くて処理が追いつかない
  • パニックや集中切れで途中を聞き逃す
  • 構文を追えず意味のまとまりが掴めない

理解していたと思ったのに、いざ通訳しようとすると分からない──

というのは、通訳訓練を始めた初期はよくあることではないでしょうか。

普段、私たちがコミュニケーションを取っている時と同じ姿勢で話者が話す内容を聞いていると、必ず話の内容が頭から抜け落ちます。

リスニングは“耳”の問題ではなく、通訳者として聞く姿勢、そして、そして意味をまとまりで掴めるかどうか。

これが、進級の大きなカギになります。

② 処理の壁|理解→要点抽出→記憶保持が間に合わず「追えない」

逐次通訳では、

聞く → 意味を取る → 要点を抽出する → 記憶を保持する → 訳出の構成を作る

という複数の思考プロセスを同時に回し続けます。

このどれかが遅れると、最後の訳出で破綻します。

例として、脳処理が追いつかないと次のような現象が出ます:

  • メモを取ろうとした瞬間に次の文を聞き逃す
  • 理解が遅れ、記憶保持する余裕がなくなる
  • 聞いた内容を日本語で処理してしまい、遅延が発生
  • 要点と詳細の優先度を決められず、パンクする

ここで誤解されやすいのですが、問題は「メモ取りが下手」だからではありません。

むしろ、脳処理が遅れているために、メモ取りに負荷が集中して崩れてしまうという構造です。

とはいえ、通訳しやすいメモ取りは確実に重要です。

ただし、それはあくまで「脳処理が整った上で効果を最大化するツール」です。

脳処理が追いつかない状態のままメモ技術だけを磨いても効果は出にくい──

これが通訳学校で多くの人がつまずくポイントだと感じています。

私はIC3でまさにこの局面で壁にぶつかりました。

③ 表現の壁|その場で文に組み立てられず「話せない」

TOEIC900・英検1級レベルでも、通訳学校に入ると多くの人がここにつまずきます。

なぜなら通訳は、“自分の考えを話す” のではなく “他人の発言を別言語で再構成して出す” から。

求められるのは英語力だけでなく、 精度と瞬発力

代表的なつまずき:

  • 言葉を探す時間が長い
  • 英語が不自然になる
  • 訳出が遅れ、テンポが崩れる
  • 文頭が出ずに沈黙が生まれてしまう

IC2〜IC3以上では、この“発話の迷い”がそのまま評価に直結します。

④ 引き出しの壁|言いたいことをはめる型がなく「言い表せない」

①〜③のすべての壁は、突き詰めると 表現の引き出しが整理されていないことに行き着きます。

通訳に必要なのは単語帳の暗記ではなく、場面別に整理された「表現フォルダ」のようなもの。

  • どの状況で
  • どの表現を
  • どんな形で取り出すか

これが整理されていなければ、理解も再現も発話もズレます。

つまり、

進級できる人は“表現の引き出し”が整っている
・進級できない人は“引き出しが未整理”

といっても過言ではありません。

クラスごとの「つまずきポイント」

ここでは、私自身が受講してきたクラス(通訳準備〜IC3)で感じた「つまずきポイント」と、IC4以降の内容について、IC3までの経験から推察できる範囲でまとめています。

IC3の上位は「逐次通訳クラスの最終ライン」であり、その先は同時通訳クラスに進みます。

その構造を踏まえると、IC3〜IC4以降は次のことが求められると考えています。

  • 話者のスピードが速くても処理が追いつく
  • 話者の話す内容が明瞭でなくても意味の骨格を外さない
  • 情報の優先順位を瞬時に判断し、過不足なくメッセージを再現する

つまり、IC3以降は、「迷う」「探す」時間がそのまま評価に影響する世界です。

クラス主な壁よくある失敗例
通訳準備基礎文法・聞き取り構文を追えない/話の枠組みが掴めない
IC1~IC2(初級逐次)ノートテイキング/再現精度書きすぎて発話が崩れる/情報を保持できない
IC3〜IC4処理速度/自然な表現理解→保持→訳出が遅れ、不自然な英語になる
会議通訳同時通訳の瞬発力聞きながら話す処理が間に合わない

IC3で感じた“処理の重さ・迷い”は、そのままIC4や会議通訳クラスでは致命傷になるのだろうと感じます。

このあたりが、通訳学校で進級が急に難しくなる理由だと実感しています。

進級が難しくなるときの共通パターン

ここまでの内容を踏まえると、進級が難しくなるケースには、いくつか共通するパターンがあります。

  • 処理の瞬発力不足
  • ノートに意識を持っていかれすぎる
  • 表現の引き出しが未整理
  • 日本語・英語の切り替えが遅い
  • “理解したつもり”で終わる(再現できない)

一見「聞き取れていない」ように見えても、実は 処理と引き出し整理の問題 であることが非常に多いです。

※参考:通訳学校に入れる英語力とは?英検1級とTOEICの違いから見る“本当の入口”
(入学レベルと進級レベルの差を把握しておくと、改善ポイントがより明確になります)

進級できなかったらどうする?

✔ 再履修は珍しくない

実際、クラスの3〜4割が再履修者ということも珍しくありません。

一度で進級できないことは、通訳学校ではごく普通のことです。

✔ 「才能がない」ではない

むしろ、再履修で基礎を整えた人ほど後で伸びるケースが多いと感じています。

✔ 弱点は“処理ライン”で分析する

進級できなかったとき、どの処理段階で詰まったのか を見極めると改善ルートが明確になります。

処理ラインは大きく分けて次の3つです:

  1. 理解(聞き取り・意味把握)
  2. 記憶保持(要点抽出・ノート・再現)
  3. 発話(表現・語順・瞬発力)

✔ 処理ラインごとの改善方法

1. 理解で詰まった場合

  • シャドーイング
  • 暗唱
  • 背景知識の補強(とくに数字・因果・話題語彙)

2. 記憶保持で崩れた場合

  • 要約練習
  • リプロ(聞き返し復元)
  • メモ取りの開発・分析(=書く量と聞く余裕の調整)

3. 発話で詰まった場合

  • 暗唱(語順のテンプレートを身体化)
  • 表現の棚卸し(引き出し整理)
  • 英語の語順での再構築練習

✔ 「どこで詰まったか」を言語化する

原因を正しく言語化できると、改善ルートが一気に明確になります。

通訳訓練は“感覚”だけでは伸びにくいため、
自分の処理ラインを客観視する癖がとても大切です。

まとめ

通訳学校の進級は想像以上に厳しいですが、その厳しさは“自分の伸びしろ”を測る指標でもあります。

進級を分けるのは、

  • 意味を瞬時に掴む
  • 保持する
  • 自然な形で出す

この3つの処理を支える 表現の引き出しと処理速度です。

つまずいた場所を正しく把握し、一つずつ改善していけば、きっと次のステージに進めるはずです。

通訳学校まわりの全体像をまとめて見たい方は、通訳学校について一気にわかる案内板 もあわせてご覧ください。

本記事が、みなさんの学習の指針になれば幸いです。

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このブログを書いている人

社内通訳として働きながら、通訳学校で学んだことをベースに「英語学習の工夫」を発信しています。
シャドーイングやディクテーション、独学の限界など、実践的に役立つ情報をお届けします。

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