
現役社内翻通訳者のYです。<詳しいプロフィールはこちら>
私は現在サイマルアカデミーで学びつつ、製造業(自動車)の現場で社内通訳として働いています。
「英語が得意だから、通訳をやってみたい」
そう思う方も多いのではないでしょうか。
しかし通訳学校は、“英語を学ぶ場所”ではありません。
通訳学校は、英語力を土台にしながら、その上に“情報処理”と“表現の再構成”という思考回路を鍛え上げていく場所です。
本記事は通訳学校の全体像(英語力の目安/クラス構造/訓練内容/進級/学校選び/向き不向き)を1本で整理します。「通訳学校が気になる」「でも自分に向いているかわからない」という方が、入学前に“全体像”を正しく掴めるようにまとめています。
この記事はこんな人におすすめです!
・通訳学校の入学基準から訓練内容、進級の仕組みまで、全体像を一気に把握したい方
・「英語は得意なはずなのに訳せない」という特有の壁の正体を知りたい方
・「自分は通訳学校に向いているのか?」を、現役生の視点から確認したい方
・学校ごとの特徴や、卒業後のキャリアパスを具体的に知りたい方
・仕事や育児と両立しながら、挫折せずにスキルを積み上げるコツを知りたい方
通訳学校まわりの全体像を知りたい方は、「通訳学校について一気にわかる案内板」 で関連ページを一覧できます。
通訳学校の入学基準:英語力の目安とレベルチェック
「どれくらい英語ができれば通訳学校に入れるのか?」
結論から言うと、実質的なスタートラインは 英検1級 / TOEIC 900点以上 です。
- 入校の可能性: 準1級 / TOEIC 800台〜
- 授業で破綻しない目安: 英検1級 / TOEIC 900前後
もちろんスコアはあくまで「目安」であり、学校側は点数そのものよりも「情報を処理するスピード(通訳脳の土台)」があるかをレベルチェックで見ています。
通訳学校の入校に必要な英語レベルと「TOEIC900でも苦労するのか?」については、以下の記事で実体験をもとに徹底解説しています。入学前に自分の現在地を確認したい方は、チェックしてみてください。
▶「通訳学校に入れる英語力とは?」
通訳学校は“語学スクール”ではない「通訳脳の養成所」
通訳学校の門を叩いた人が最初に受ける衝撃、それは「英語は聞こえるのに、訳せない」という現象です。
「英語単語は拾えたのに、意味が掴めない」
「言えるはずなのに、訳し始めると崩れる」
「情報が保持できず、途中で消えていく」
こうした現象が起きるのは、通訳学校が英語を学ぶ場ではなく、言語を介した「思考プロセス」を鍛える訓練機関だからです。
そもそも通訳者の仕事とは、単に言葉を置き換えることではありません。「話者が本当に伝えたいメッセージを正確に把握し、ターゲット言語で、論理的かつ分かりやすく再構成して届ける」こと。
そのために不可欠なのが「意味の処理能力」と「メッセージの再構成能力」です。
- 情報の構造化:話の骨格(主張・因果関係)を瞬時に見抜く
- 情報の峻別:重要点と枝葉を選別する
- リテンション:短期記憶を論理の筋道で保持する
- 表現の再構成:ターゲット言語で、聞き手に伝わる形に組み替える
通訳学校は、これらの技術を徹底的に磨き上げ、プロとして通用する「頭の使い方」を身体化していく場所なのです。
授業で繰り返されるのは、単なる語学の勉強ではなく、こうした「意味の処理能力」を極限まで高める筋トレです。通訳学校とは、英語力を道具として使いこなし、プロとしての思考回路を鍛える場所だと言えます。
では、実際にどのような試験を経てこの訓練の場に入れるのか。次章では、入学の関門となる「レベルチェック」の実態について解説します。
入校試験・レベルチェックの実態

筆記試験(英訳・ディクテーションなど)
筆記は、あくまで 通訳訓練が成立するだけの基礎英語力があるかを確かめる役割が大きいようです。
よく見かける形式としては:
などが中心で、通訳技術そのものを測るものではありません。印象としては、“最低ラインの英語力チェック” という位置づけに近いです。
スピーチ
サイマルアカデミーでは、入学試験に“スピーチ”が基本的に含まれています。ここで言うスピーチは、英検1級の2次試験に近い形式 です。
短いトピックが提示され、それについての“英語でのスピーチ能力” を見る形式です。
音源を聞いて再現する逐次通訳とは異なり、以下のことが問われる内容になっています。
私もこのレベルチェックを受けてサイマル・アカデミーに入校しましたが、このテストは通訳技能(逐次・メモ取り)を見るのではなく、通訳訓練を開始するために必要な“思考と英語の土台” を見る試験という印象でした。
※私の体験は、「サイマルアカデミーのレベルチェック」で触れています。
逐次通訳テスト
上位クラスに入るためのレベルチェックでは、逐次通訳テストが追加されることも多いようです。
このテストでは、通訳としての“素地”を確認していると考えられます。
通訳の基礎となる処理能力
私は複数校を受験したわけではないので、ここでは自分の体験+公開情報をもとに、一般的な傾向レベルの話にとどめています。
とはいえ、どの学校にも共通していると感じるのは、英語力だけでなく、「意味処理」と「再構成」の素地を見ているという点です。
通訳訓練では、語学力の先にある「処理の質」が問われるので、『入学時点でその土台がどれくらいあるかを測ろうとしている』と理解しています。
中には、こんな疑問を抱く方もいるかもしれません。
「通訳学校に行かずに通訳スキルは身につくのか?」
私も最初はそうでした。そして、私が導き出した結論はこうです。
通訳スキル(構造化・瞬発力・背景知識)を鍛える段階に入ると、独学だけでは伸ばしづらい領域が出てくる
次は、その理由を3つに分けて整理します。
独学では再現が難しい通訳スキル(構造化・瞬発力・背景知識)
まず、前提として通訳訓練の本質は、“正解のある作業”ではなく、多層処理を数秒単位で回す技術です。これを独学で取得しようとすると、下記の弱点が出やすいです。
- ズレが見えない
- 時間制約がかからない
- 理解・保持・再構築のどこで崩れているかが可視化されない
それは、独学だと「崩れを診断できないまま負荷が上がる」という構造があるからです。
この点に関しては、下記の『なぜなぜ分析』で深掘りしています。
興味のある方は下記の記事も見てみてくださいね。
▶ なぜなぜ分析#00|独学が限界になる理由(診断不在→空回り→余白消失)
独学で通訳スキルを身につけにくい理由は、下記の3つが挙げられます。
① 構造化:話の骨格を瞬時に掴む力をつけるには“外からの視点”が必要
まずは、話の骨格(論点・因果・階層)のズレは、外からの目がないと気づきにくいという点。自分では論理を掴んだつもりでも、講師に聞いてもらうと、“構造的なズレ”が見つかります。
「主語がズレている」
「因果が逆」
「論点の階層が崩れている」
通訳するために「聞く+メモを取る+訳す」を同時並行で行うという負荷がかかった状態で処理するので、初心者ですと、母国語でもズレは起き得ます。
非母国語の英語なら、そのズレがさらに大きくなりやすい。
もちろん、独学で通訳スキルを習得し、第一線で活躍されている通訳者もいらっしゃいます。ですが多くの初心者の場合、客観的に自分の訳出を的確に評価・軌道修正するのは難しいでしょう。
② 瞬発力:負荷をかける環境が必要
通訳の瞬発力は「聞く→意味を固める→記憶保持→口を開く」までを時間内に回す処理速度のことです。
逐次通訳は、一塊を聞いたあと数秒で口を開く前提で進みます。通訳学校での訓練も、この“時間制約”を前提にしています。
ところが独学だと、どうしても次のようなことに陥りがちです。
- 音源を途中で聞き直す
- 言い出した内容を完結させずに、途中で何度もやり直す
- 間が開く、「えー」といった余計な言葉を無意識に言ってしまう
通訳に必要な瞬発力は、下記のような負荷をあえてかけ、初回でとにかく言い切る練習をしないと、なかなか伸びません。
③ 背景知識:体系的に積み上げる仕組みが必要
また、背景知識は“点”で持っているだけだと、通訳では引き出せません。知識が線として繋がって、初めて使えます。
通訳学校の教材では、経済・政治・国際情勢・技術・IT・食料品・医療・社会問題・・・など、幅広い分野を扱っています。その中で、普段では触れない領域の語彙や概念が次々に出てきますが、表面的な知識だけでは的確な訳出はできません。

事前準備は十分!思っていても、いざ授業で教材を通訳してみると、調べ足りなかったと反省の繰り返し。。。
通訳学校での訓練を通して「自分の知識の穴」が次々と浮き彫りになりますので、穴を埋める方向が見えやすくなります。意識的に幅広い分野に触れるようにしても、独学だと「何を/どれくらい/どの順番で/どこまで」を設計しにくいもの。
結果的に学習が散発的になりがちで、知識が点のまま残る傾向にあります。
どこまで独学でいけるか
もちろん、語彙・リスニング・シャドーイングなど、基礎の多くは独学での積み上げが可能です。
ただ、社内会議の逐次通訳や国際会議寄りの現場では、構造化・瞬発力・背景知識を数秒単位で同時に回す必要が出てきます。
ですので、独学だけだと限界が出やすいです。私自身も、「通訳は独学では到達できない領域がある」と痛感した経験があります。
通訳学校のカリキュラムは、独学で抜けやすい要素(構造化・瞬発力・背景知識)を、段階的に積み上げる設計になっています。次に、その“段階(レベル構造)”を全体図で整理します。
「独学でどこまで通用するのか/どこから専門訓練が必要になるのか」は、こちらで整理しました。
▶『独学に限界を感じ、通訳学校のサイマルアカデミーの入学決意の理由』
▶『独学で通訳はどこまで通用する?できること・限界・必要な訓練を徹底解説』
独学 vs 通訳学校で悩んでいるという方は、下記の記事も合わせて参考にしてみてください。
▶『独学か通訳学校で悩んだら考えるべきポイント』
通訳学校のレベル構造:準備→基礎→逐次→同時
通訳学校のレベルは、「通訳に必要な処理能力」の段階に応じて設定されています。

ここでは、各校に共通する“全体像”だけを、大まかに整理します。
※詳細は下記のクラス比較記事にまとめていますので、合わせて参考にしてみてください。
▶「クラスレベルの解説記事」
準備課程(基礎の土台づくり)
通訳訓練の入口となるクラスですが、唯一、まだ英語学習の要素が強いクラスでもあります。サイマルアカデミーでは、「通訳準備クラス」がここに該当します。
期の後半で「英語の勉強」と「通訳の訓練」の違いを実感するようになります。
「入校できる英語レベルの目安」と「サイマル・アカデミー準備クラス」の立ち位置はこちら
▶『通訳学校に入れる英語力とは?』
この通訳準備クラスの授業の様子を知りたい人はこちら
▶回顧録シリーズ:通訳準備クラス編
基礎課程(通訳の基礎技術を身につける)
次の段階では、“通訳の技術”そのものを学び始めます。扱う教材も、訓練用に作成された音源を使うことが多く、音源のスピードも情報の密度も調整されていることが多いです。
構造化・保持・再構成といった“通訳の土台”がここで固まります。
逐次通訳の完成(通訳の“壁”が来る段階)
この段階に入ると、使用する音源は、実際のスピーチやプレゼンの音源で通訳訓練を行います。話すスピードも、情報の密度や明確さも均一ではありません。
そして、求められる通訳の質もだんだんと高くなります。下のクラスでは指摘されなかった細かい点がフィードバックされます。
そのため、多くの人がここで最初の大きな壁にぶつかるという印象です。
語学力だけでは対応できず、“意味処理の質”の差が出る段階です。ここで踏ん張れるかどうかが、その先の進級に大きく影響します。
同時通訳/プロ手前(最終段階)
同時通訳のクラスは、通訳学校の最上位クラスです。
ここまで来ると、「通訳者としての思考回路」が完成する領域です。
どんな人が通っているの?
では実際に、通訳学校にはどんなバックグラウンドの人が集まり、どのような経験値からスタートしているのでしょうか。
経歴も目的もさまざま
通訳学校には、多様なバックグラウンドの方が集まります。
年齢層も20代〜40代以降まで幅広い
通訳学校は、年齢層が広いのも特徴です。
- 20代: キャリア初期で通訳に挑戦したい人
- 30代: 実務の中で必要性を感じた人
- 40代: キャリア転換や第2の人生として通訳を目指す人
- 50代〜: 長年の英語経験を活かして挑戦する人
40代以降の方は、 「人生経験×背景知識×安定した思考力」 が強みになっていると感じました。
通訳学校の訓練内容:リテンション・構造化・メモ・サイトラ
「情報をどう処理し、どう再構成して伝えるか」という“頭の使い方”を鍛える訓練について、主要なトレーニングの全体像を、要点だけに絞って紹介します。
聞く力:リテンション(記憶保持)

通訳の基本は、「聞いた内容を、意味のまとまりとして保持する」 こと。
単語を追うのではなく、意味のブロックとして記憶する力が鍛えられます。
ここが弱いと通訳は成立しないため、基礎クラスでは、シャドーイング、リプロダクション、パラフレージングなどで、重点的に訓練します。
構造化:情報の骨格を取る訓練
逐次通訳の場合、通訳者は、必ずしも聞こえた順番に訳すわけではありません。話の論旨を瞬時に掴み、論理構造を整理し、時には分かりやすい表現に変換、情報提示の順番を変える、といったことをします。
- 何が主張で
- 何が理由で
- 何が例で
- どう因果がつながっているか
基礎クラスでは、話の論旨を瞬時にを掴み、論理構造を整理する力を鍛えるため、要約やパラフレージング演習を通して訓練します。
これができると、長い話でも破綻せずに訳せるようになります。
メモ取り:記号化・論点整理
通訳でのメモ取りは、話者の言葉をそのまま“書き写す”ことではありません。
このような情報を頭の中で分析しながら、必要に応じて記号化しながらメモに残す技術です。
ここでは、「何を書くか」と同じくらい “何を書かないか” が重要です。書きすぎても処理が追いつかず、メモが少なすぎても情報の骨格が再現できません。
その意味で、メモ取りは質の高い通訳には不可欠なスキルです。そして、正解が一つではない“個人技”でもあります。
『聞こえた情報の痕跡をどうメモに残せば、自分がちゃんと訳せるのか』
その最適解は人によって違います。
通訳学校の初級〜基礎クラスは、教材のスピードも内容も比較的整理されているので、この「自分のメモの取り方」を試すにはちょうど良い環境です。
このあたりの感覚を、早い段階でざっくり掴んでおくと、中級・上級での処理がだいぶ楽になります。
サイトラ:瞬間理解を鍛える
サイトラ(sight translation)は、英文を読み上げるのではなく、意味のまとまりごとに瞬時に日本語へ再構成する訓練です。
実務でサイトラをしないといけない場面があるのも事実です。ですが、これは処理能力・対応力を鍛える通訳訓練の1つでもあります。
影の主役:背景知識(ニュース・経済・社会)
通訳学校では、教材の内容を通じて背景知識の不足が浮き彫りになる場面が多くあります。技術、経済、国際情勢、社会問題など、普段触れないテーマに触れることで、次のことが鍛えられます。
- 文脈の理解
- 専門用語の処理
- 知識の引き出し方
背景知識があるとリテンションも構造化も安定し、訳の精度が一段上がるため、実は通訳訓練の“裏の本丸”とも言える部分です。
もっと通訳学校で行う通訳訓練について詳しく知りたい人はこちら:
▶通訳訓練の3本柱(理解・リテンション・表現)|9つのトレーニング総論
通訳学校の進級:評価軸と落ちやすい壁
通訳学校のクラスは、春学期と秋学期に分かれており、(ゴールデンウィーク・年末年始・学期間の休暇を除くと)1期はおおよそ4か月です。
この4か月の学期が終わるタイミングで、進級テストが実施されます。
テストで基準を満たした通訳パフォーマンスを発揮できれば、次の学期は上のクラスへ進級。基準に達しない場合は、同じクラスを再履修することになります。
進級は、複数の能力の “総合評価” に基づいて判断されます。
理解・保持・再現・表現の4軸
通訳のパフォーマンスは、大きく次の4つに分解できます。
- 理解(Comprehension):話者の意図・論理・因果を正確に把握できているか。
- 保持(Retention):内容を“意味の塊”として安定して記憶できているか。
- 再現(Reproduction):聞いた内容を、要点を落とさずに再構成できているか。
- 表現(Delivery):日本語・英語ともに、明確で自然な表現で伝えられるか。
これら4つは、単独で成り立つものではなく、総合的な“処理能力”として評価されます。
通訳技能には、理解・保持・再構成・背景知識など多くの要素が関わっていますが、最終的にパフォーマンスの差を分ける核心は、この3つの力に集約されます。

- 論理構築力(内容を正確に把握し骨格を組む力)
- 処理速度(瞬時に理解し、保持し、再構成するスピード)
- 表現の自然さ(聞き手に届く自然で明瞭な日本語/英語で届ける力)
通訳学校の進級判定も、この3つの柱がバランスよく育っているかで決まります。
この3つが噛み合った瞬間、通訳の「安定性」が一気に上がり、進級ラインを越えられるようになります。
※私なりの考察を「通訳学校の進級の厳しさ」で詳しく書いています。
進級の難しさは“語学力”ではなく“情報処理力”と”表現力”
通訳学校における進級判定は、単なる英語力では決まりません。
これら複数の能力が総合的に評価されるため、英語が得意でも進級できないケースは珍しくありません。ここが、通訳学校の本質のひとつです。
通訳学校で進級できない典型的な理由
この章では深掘りしませんが、典型的には:
- リテンションの弱さ
- メモ取りの迷走
- 論理の取り違え
- 表現の不自然さ
- 背景知識不足
- テーマ理解の浅さ
などが、進級を阻む要因としてよく挙げられます。
挫折しやすいポイント
通訳学校では、ほとんどの人がどこかの段階で「壁」にぶつかります。典型的なのは、次の3つです。

メモ取りで迷子になる
数字・固有名詞・抽象度の高いテーマが増えると、「何を書くか/何を捨てるか」の判断が追いつかず、メモが情報の羅列になってしまいがちです。
リテンション(記憶保持)の壁
馴染みのない分野では、専門語や背景の理解が追いつかず、情報の“塊化”ができないまま流れていきます。
語学力だけでなく、意味処理・構造化・背景知識の総合力が問われる部分です。
背景知識の不足
社会・経済・国際政治・技術など、未知のテーマに突然触れると、文脈もニュアンスも掴めず、メモと記憶保持が連鎖的に崩れます。
単語を点で知っているだけでなく、「線(ストーリー)」でつながっているかどうかが、そのまま安定感に直結します。
詳しくは、「通訳学校で進級できない理由」で詳しく書いています。
通訳学校の選び方:サイマル/ISS/インタースクール比較の見方
通訳学校は、サイマルアカデミー、ISSインスティテュート、インタースクール…といくつか代表的な選択肢がありますが、「どこが一番いいか」ではなく「自分の目的と相性がいいか」で考えるのが現実的です。
サイマルアカデミー
会議通訳・ビジネス通訳寄り。社会人受講生が多く、実務を意識したテーマが中心。
ISSインスティテュート
基礎〜上級までレベル帯が幅広く、じっくり型のカリキュラムが組まれている印象です。
インタースクール
ニュース・国際情勢・メディア通訳など、「時事」に強いイメージを持っています。
あくまでも私個人の印象レベルの話なので、最終的にはパンフレットや説明会で「自分の目」で確かめるのがおすすめです。
※私個人の考察ですが、各校の詳しい違いは、「通訳学校のクラス構成比較」で整理しています。
選び方の軸
学校を選ぶときは、次のような軸で見ていくと整理しやすいです。

今回は大手の3大通訳学校をメインに取り上げましたが、他の通訳学校も存在します。
通訳学校でなくても、通訳スキルを学べる方法もあります。
▶私がサイマルアカデミーを選んだ理由
私のように、最初はプライベートレッスンで、自分のペースで学ぶというのも1つの選択して考えられると思います。
どの学校があるいはどの方法が「正解」か、その答えは個々人によって異なります。大事なのは、自分の将来像と、今の生活スタイルにフィットするかどうか、これを見極めることです。
通訳学校に向いている人・向いていない人
通訳学校に向いている人
通訳学校は、一般的な「語学スクール」とは運営思想が全く異なります。そのため、向いている人にはこんな傾向があります。
通訳としてのキャリアを視野に入れている人
通訳会社が運営するスクールは、この層に最もフィットするかと思います。
自主的に学べる人
通訳学校は「授業についていく」場所ではなく、授業を軸に“自分で鍛える”場所です。こうしたタイプの方は、通訳学校と非常に相性が良いです。
通訳学校に向いていない人
ここでいう「向いていない」は、通訳学校の学習スタイルと相性が合いにくい、という意味です。
興味本位で“通訳をかじってみたいだけ”の人とって、通訳学校は負荷も宿題の量もハードなため、「語学ついでに少し通訳を」の感覚だとギャップが出やすいです。
受け身で学びたい人ですと、講義を聞くだけでは伸びず、自分で課題を設定しないと、授業についていくのに苦労する可能性が高いです。各自での予習・復習・背景知識の補強が“前提”になっており、期の後半にかかると、難易度も1段上がっていきます。
そのため、興味本位で始めると、
「思っていたのと違う」
「なぜか成果が出ない」
「急に難しくなってついていけない」
というギャップが生まれやすく、結果として挫折しやすいのも事実です。
通訳学校に通うメリット・デメリット
メリット:成長スピード・思考の変化・人脈・キャリア
①成長スピードが圧倒的に速い
- 一人では再現できない負荷(3秒後に訳す/突然のテーマ/人前での訳出)
- プロ通訳者からのフィードバック
- クラスメイトとの程よい緊張感
この3つが揃うことで、独学では数年たっても変化が感じられなかったのが、半年後には僅かながらも一歩進んでいるという実感が得られました。
②思考の構造そのものが変わる
- 「英語を勉強する」から「意味を処理し、再構成して届ける」に軸が移る
- 日本語の組み立て方や、物事の見方そのものが変わる
これは、通訳を一生の仕事にするかどうかに関わらず、その後のキャリア全体に効いてくる変化だと感じています。
③同じ方向を向いた仲間との出会い
- TOEICや英会話とは違う、“通訳を本気でやりたい人”が集まる場
- クラスメイトとのつながりが、そのまま将来の情報交換のネットワークに
④通訳学校とキャリアのつながり(出口戦略)
大手校では以下のような実務への橋渡しが用意されています。
| 学校名 | キャリア接続の仕組み |
| サイマル | 成績優秀者はエージェント(サイマル・インターナショナル)への推薦あり |
| インター | 「セミプロフェッショナル制度」で在学中から実務経験を積むチャンス |
| ISS | 修了後の「フリーランス通訳登録制度」で案件紹介の道が開ける |
もちろん、登録=即安定ではありませんが、「実務への最初の切符」を自力で手に入れるのは非常に困難です。この「扉」の前に立てることこそが、通訳学校に通う最大の価値の一つだと言えます。
デメリット:時間・お金・負荷
もちろん、良いことばかりではありません。
①時間的コスト
- 週1〜2回の授業に加え、宿題・復習・背景知識の補強の時間確保
- 「週にどれくらい時間を割けるか」を現実的に見積もる必要がある
②金銭的コスト
- 1期(約4か月)ごとに、まとまった授業料がかかる
- 背景知識や英語力を鍛えるための英語雑誌・ニュース雑誌の購読料も積み重なる
③精神的な負荷
- 毎週のように「できなさ」に直面する
- 進級のプレッシャーが常にある
こうした負荷を「成長の燃料」にできるかどうかが、通訳学校と付き合ううえでの鍵になります。
通訳学校への「よくある不安」と向き合い方
通訳学校への入学を検討する際、「自分についていけるだろうか」「仕事と両立できるのか」という不安は、誰しもが通る道です。私自身、今でも「できない自分」に直面しては、試行錯誤を繰り返す日々を過ごしています。
ここでは、特に入学前に解消しておきたい「3つの大きな不安」について、現役生の視点から本音で解説します。
仕事・家事・育児と両立できるのか?
結論から言うと、物理的には可能ですが、意識的な設計が必要です。
- 夜間クラスやオンラインクラスを選ぶ
- 平日は「短時間でも毎日触る」リズムを作る(例:平日30〜60分+週末まとめて)
私の周りでも、多様な働き方をしている人が通っています。
中には、両立が難しくなり、継続受講を断念されるクラスメイトもいました。継続できている人に共通しているのは、「隙間時間をうまく活用して、平日1時間は必ず確保する」といった仕組み化ができている点です。
重要なのは、生活の中で“通える設計”を先に作っていくこと。そうでないと、厳しい通訳訓練についていけず、継続できない可能性が大きいです。
「通訳学校は意味ない」という噂の真相
ネットで見かける「意味ない」という声。その多くは、基礎英語力が不足した状態で受講してしまったり、授業を「教わる場」という誤解など、以下の3つのボタンの掛け違えから生まれています。
- 基礎英語力の不足:土台がない状態で「手法」だけを学ぼうとしている。
- 自習不足:授業を「知識をもらう場」と誤解している(本来は方向性を確認する場)。
- 短気な成果:数ヶ月でプロレベルになれると期待しすぎている。
逆に言えば、「基礎・自習・継続」の3点さえ揃えば、独学では絶対に到達できない場所へ導いてくれるのが通訳学校です。
授業についていけず「落ちこぼれる」ことへの恐怖
「自分だけ訳せない」という感覚は、実は全員が経験します。
- 周りの訳出スピードが速い・訳出がうまくて焦る
- テストの評価が上がらない
- 宿題の量に圧倒される
大事なのは、講師からの評価を一発勝負の結果として判断するのではなく、自分が「フィードバックをどう活かすか」という点です。 テストの結果だけで判断せず、半年後、1年後の自分を信じて地道に課題を潰していけば、評価は必ず後からついてきます。

私自身、苦手部分を一つずつ潰すことで評価が変わっていきました。「今」の結果だけで判断せず、長期的な目線で自分を信じて積み上げることが大切です。
通訳学校についてのよくある質問(FAQ)
Q1. 仕事や育児と両立できるか不安です。
A. 物理的に可能ですが、意識的なスケジュール設計が必要です 。 授業(週1〜2回)以外に、宿題・復習・背景知識の補強時間を確保しなければなりません 。私の周囲でもフルタイム勤務や子育て中の方がいますが、「平日は短時間でも毎日触れるリズム」を作ることが継続の鍵です 。
Q2. 独学だけでプロのスキルは身につきますか?
A. 基礎(語彙やリスニング)は可能ですが、通訳特有のスキル(構造化・瞬発力)は独学では限界があります 。 独学だと「自分の訳のズレ」に気づけず、時間制約や他者の視線といった負荷もかけにくいため、客観的な評価が得られる学校の環境は非常に有効です 。
Q3. 進級できずに「同じクラスを再履修」になることは多いですか?
A. はい、珍しくありません。「情報処理能力」が追いつかないと進級できないのが通訳学校の特徴です 。 多くの人がどこかの段階で「壁」にぶつかりますが、進級できなかった時期も「できない自分」と向き合うことで、着実に通訳者としての思考回路が育っていきます 。
Q4. どの学校が自分に合っているか、どう判断すればいいですか?
A. 「将来のビジョン」と「現在のレベル帯」を軸に選ぶのが現実的です 。 会議通訳やビジネス実務を重視するならサイマルといった傾向はありますが、まずは説明会やレベルチェックを受け、「自分の目」で雰囲気を確認することをおすすめします 。
Q5. 途中で挫折しそうな時の心構えは?
A. 「停滞感こそが普通である」と覚悟しておくことです 。 通訳訓練は毎日成長を実感できるものではなく、ある日ふと「昔の教材が楽に聞こえる」瞬間が訪れるまでは忍耐が必要です 。他人のペースと比較せず、自分の「前よりできるようになったこと」を探し続ける地味な覚悟が大切です 。
経験から伝えたいこと
ここからは、少しだけ主観を込めて書きます。
通訳学校に通っていると、必ず「負の感情」に出会う場面が訪れます。できない自分に打ちのめされたり、クラスメイトとの差に焦ったり、進級試験の不安に押しつぶされそうになったり。
それでも、私は通訳学校を「人生の密度」が一気に上がる場所だと感じています。
1. 「地味で静かな覚悟」を持つ
必要なのは、派手な決意ではなく「地味で静かな覚悟」です。
- うまくいかない日も予習・復習を淡々とやる
- 進級できなくても、もう一度同じレベルで向き合ってみる
- 他人ではなく、以前の自分より「できたこと」を探し続ける
こうした小さな意思決定の積み重ねこそが、通訳訓練の本質です。
2. 成長は「点」ではなく「線」で現れる
通訳訓練は、毎日成長を実感できるものではありません。むしろ停滞感の方が長いでしょう。
しかし、半年・一年というスパンで振り返ると、「昔の教材を聞いたとき、見える景色が確実に違う」という瞬間がふっと訪れます。そのとき初めて、あの日の“できなさ”も、今日に繋がっていたのだと実感できます。
3. 「ものの見方」が変わる
通訳学校で一番育つのは、耳よりも「ものの見方」かもしれません。ニュースの背景、会議の文脈、世の中の出来事——。
世界の見え方がゆっくりと、しかし確実に変わっていきます。この変化は目に見えませんが、一生モノの財産になります。
まとめ:通訳学校は“正解”ではなく“選択”
通訳学校は、単なる語学スクールではなく、「思考と再構成の訓練機関」です。
- 独学では再現しにくい「負荷」と「環境」がある
- その一方で、時間・お金・精神的な負荷も大きい
だからこそ、「今の生活でどこまでリソースを割けるか」を一度立ち止まって考えてみてください。通訳学校に通うことだけが正解のキャリアではありません。
もしあなたが今、「自分なんかにできるのか」と不安を感じつつも「それでも一歩踏み出してみたい」と思うなら。このガイドが、その決断の材料になれば嬉しいです。
具体的な日々の葛藤や、各クラスで感じた「壁」については、「通訳学校回顧録」シリーズで、もう少し踏み込んで書いています。
通訳学校まわりの全体像をまとめて見たい方は、「通訳学校について一気にわかる案内板」 もあわせてご覧ください。
もし「通訳学校に行くべきか迷っている」という段階であれば、こちらの記事も参考にしてください。
▼ 通訳学校に行くか迷う段階の方へ
▼ 学校選び・レベル構造をもっと知りたい方へ
この記事は有益でしたか?
このブログを書いている人
社内通訳として働きながら、通訳学校で学んだことをベースに「英語学習の工夫」を発信しています。
シャドーイングやディクテーション、独学の限界など、実践的に役立つ情報をお届けします。







