回顧録#06: サイマル通訳準備 ― BBCニュース訓練と緊張の中で積み重ねた小さな成長

回顧録#06|サイマルアカデミー通訳準備BBCニュース 通訳学校体験記

管理人
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現役社内翻通訳者のYです。<詳しいプロフィールはこちら>
通訳学校での学びや日々の奮闘を、実体験を交えて綴る「通訳学校回顧録」シリーズをお届けしています。

記事の概要

大学時代、BBCニュースの速さや情報量、慣れないイギリス発音に苦戦し、背景知識の不足や講師からの容赦ない指摘も重なって、苦手意識を抱えたまま年月が過ぎていきました。
そして今、通訳訓練の入口であるサイマルアカデミー通訳準備クラスで、再びBBCニュースと対峙することに。サイマルアカデミー準備科での通訳訓練を通じ、戸惑いや緊張の中で少しずつ積み重ねた成長の記録を振り返ります。

はじめに

ここからはいよいよ、通訳準備での授業の具体的な様子に入ります。

私自身、留学経験や社内での通訳経験があったため、正直、準備科からのスタートは少し意外に感じましたですが、振り返れば私の英語は高校生レベルで止まり、ビジネス英語も特定の場面に限られ、さらに体系的な日本の英語教育もほとんど受けていません。

実際に受講してみると、基礎からの学び直しが想像以上に奥深く、自分の課題が明確になった貴重な時間になりました。

現場の社内通訳で限界を感じていた部分は、レベルチェックで指摘された「ネイティブらしい表現力」の不足に起因していたのかもしれません。そう考えると、今の自分に必要な課題が明確になり、素直に受け入れる気持ちが生まれました。


そして、回顧録#00で触れた、あのBBCニュースと正面から向き合う日々が、ここから始まりました。

講師の一言が突きつけた現実

日本人講師の初日のクラスで、先生は翻訳・通訳業界でよく知られている格言を紹介してくださいました。

Knowing two languages does not make you a translator/interpreter any more than having ten fingers makes you a pianist.

2つの言語を知っているからといって翻訳者や通訳者になれるわけではない。10本の指を持っているからといってピアニストになれるわけではないのと同じだ。

「英語ができるから翻訳・通訳ができるわけではない」――実務で痛感してきた事実です。瞬発力やニュアンス再現の難しさ、背景知識の不足からくるもどかしさを何度も味わってきました。

社内で“通訳ができる人”と見られても、瞬発力やニュアンス再現、会議の流れを読む力など、本物の通訳スキルを体系的に学んだことはありませんでした。その言葉を聞いた瞬間、頭で分かっていたはずのことが、改めて真正面から突きつけられた感覚がありました。


英語力は通訳の必要条件であっても、十分条件ではない。通訳には英語力が必要だが、それだけでは奏でられない世界がある――その事実を、通訳準備クラスを開始して早々に痛感しました。

BBCニュースを教材にした通訳訓練

さて、大学時代にトラウマとして記憶に残っているBBCニュース動画。約5分間のニュースで、経済から政治、科学技術まで幅広いテーマを本物のスピード感で届けてくるため、最初はただ聞き取るだけでも精一杯。

動画を前半・後半に分けて視聴し、内容理解や表現の確認をしますが、ざっくりとした内容は捉えても、ディテール情報は全く頭の中に残りませんでした

また、ネイティブ講師のA&Bセッションでは、不定期かつ予告なしでリプロダクション(聞いた英文をできる限り同じ言葉で再現する訓練)が実施されました。

授業で使ったBBCニュースの音源や、講師が別途録音した素材が使われ、誰が指名されるか分からないため独特の緊張感が走ります。

指名された瞬間、心臓の音が耳元で鳴る感覚がして、口を開く前から顔に汗がにじんでいました。オンライン授業とはいえ、シーンと静まり返った中で、かつ、クラスメイトが聞いている中でリプロダクションをするあの空気感は、言葉では表せません。その集中度とプレッシャーは、まさにインテンシブ授業さながらでした。

パラフレージングとリテンションの徹底反復

日本人講師のクラスでは、前週のニュースで登場した英語表現を、直訳ではなく自然な日本語に置き換える練習をしました。

そこからリプロダクションに加えて、パラフレージング(言い換え)、シャドーイング(ほぼ同時発話)、リテンション(記憶再現)といった、Dセッションの模擬対談通訳に向けた布石となる基礎訓練へと進みます。

リプロダクション:聞いた英文をできる限り同じ言葉で再現する。記憶力と構文把握力を磨く。
パラフレージング:文意を保ちながら別の言い方に言い換える。表現の柔軟性を鍛える。
シャドーイング:音声をほぼ同時に口に出す。発音やイントネーション、耳と口の連動を強化。
リテンション:英文を記憶し、できる限り正確に再現。瞬時の保持力と再現力を高める。

理屈では分かっていても、いざ実践となると、言葉はなかなか口から出てきません。構文や情報を意識すればするほど、逆に頭からすり抜けていく――そんなもどかしさに駆られました。

今まで触れてきたことがないようなトピックスで訓練をすることで、自分がいかに安全地帯で社内通訳をやってきたのか、嫌というほど思い知らされました。

この思いは後のクラスでも何度も突きつけられることになります。そのたびに別の回顧録で改めて触れていきたいと思います。

暗唱課題

ニュースとは別に、小説から指定範囲を2週間かけて覚える暗唱課題もありました。講師いわく「毎日10回繰り返せば覚えられる」、「声優のように抑揚や感情を込めて読むことが、通訳の訳出に生きてくる」と。そして、2週間後にはクラス全員の前で披露しなければなりません。

講師の言うとおり、確かにやれば暗唱はできました。暗唱を披露すれば、練習の跡は隠しようもなく浮かび上がる――そんな場でした。手を挙げなければランダム指名されるため、サボる余地はありませんでした。甘くはありませんでしたが、その緊張感こそが、今振り返れば成長の原動力だったと感じます

この準備科クラスで最初は30秒程度、最終的には1分強の文章を暗唱できるようになりました。この課題はカナダでの中学時代の宿題を思い出させ、懐かしさと新鮮さが入り混じる体験でした。

模擬対談通訳とオプション宿題

A〜Cセッションで学んだ表現を活用する舞台が、Dセッションの模擬対談通訳です。期の前半は1〜2文の短い通訳から始まり、後半になると担当ポーションが長くなりました。途中からメモ取りの指導も入りましたが、これがまた一筋縄ではいきません(この話は次回に詳しく)。

さらに、希望者向けにオプション宿題がありました。Dセッションの通訳を再度自分で行い、録音 → トランスクライブ(書き起こし) → 自己添削して提出するというものです。期間中3回の提出機会があり、仕事で多忙な中でも全て提出しました。

録音を聞き直すだけでなく文字に起こすことで、フィラーや言い直し、自分の癖が客観的に浮かび上がります。そして、自分の通訳の不安定さが可視化され、避けられない作業でした。

さいごに

暗唱もリプロも、決して完璧ではありませんでした。ただ、苦手意識のあった素材や緊張の場面に、少しずつ向き合えるようになりました。

基礎訓練、暗唱課題、自分をさらけ出すオプション宿題――どれも負荷の高い課題でしたが、この期間の積み重ねは後の学びを支える確かな土台となりました。

次回は、私が通訳準備で実践していた予習・復習のサイクルや中間テスト、そして後半にかけて広がっていった学びを振り返ります。



このブログを書いている人

現役社内通訳者として、サイマルアカデミーで学んだ日々を「回顧録シリーズ」として記録しています。
授業での体験や葛藤、成長の過程を率直に記録しています。
同じように通訳を目指す方に「リアルな声」として参考になれば幸いです。

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