
このブログの筆者で現役社内翻通訳者のYです。<詳しいプロフィールはこちら>
私は現在サイマルアカデミーで学びつつ、製造業(自動車)の現場で社内通訳として働いています。
「TOEIC900を取ったのに、会議では沈黙してしまう」
もしそう感じているなら、それは努力不足ではありません。
TOEIC LRは“話す力”を測っていないからです。
LRで証明できるのは、主に「読む・聞く」というインプットの力。
一方、会話で必要なのは 即応力(反応の速さ) と 相互作用(キャッチボール) です。
本記事では、
- なぜTOEIC900でも会話が難しいのか
- TOEICで測られない力とは何か
- そして、そこからどう伸ばしていけばいいのか
を、社内通訳として現場に立つ筆者の経験を交えて整理します。
この記事はこんな人におすすめです!
・TOEIC900を取ったのに、英会話がスムーズにできないと感じる方
・就職・転職でTOEICを武器にしたいが、実務での会話力に不安がある方
・「TOEIC高得点=話せる」という考えを整理したい方
・独学で会話力を伸ばしたいが、具体的な方法が分からない方
・翻訳・通訳を目指していて、TOEIC後のステップに悩んでいる方
まず整理しておきたいこと:TOEICには2種類ある
「TOEIC」と一口に言っても、実は2種類あります。
LR (Listening & Reading) :
👉 「読む・聞く」=インプット型テスト。
一般的なTOEICスコア(900点=多くがこちら)
SW (Speaking & Writing) :
👉LRとは別試験。
日本で一般的に言われる「TOEIC900点」は、ほぼ LR を指します。
つまり、TOEIC LR900点は「読む・聞く力の証明」にはなりますが、
話す・書く力の保証ではありません。
つまり、「TOEIC900点=英語が話せる」ではないのです。
ですので、TOEIC LRで高得点を取った人が「英語を話せない」と悩むのは、
自然なことです。
TOEIC900点を超えても、通訳学校の訓練では思わぬ壁にぶつかることがあります。
それは、試験では測れない「意味処理」と「即応力」が問われるからです。
詳しくはこちらの記事で整理しています👇
なぜ会話が止まるのか——“処理”と“相互作用”のギャップ
TOEIC試験は、1人で文章や音声を「処理」する場です。
会話は、相手の言葉を受けて「相互作用」を運用する場です。
この前提差こそが、ギャップの正体です。
TOEIC900でも会話が苦手な人には、いくつか共通点があります。
インプット偏重/完璧主義/会話経験不足/資格で満足。
これは英語力そのものというより、「英語の使い方(運用)」がインプット側に偏っている状態です。
つまり、知識(理解)はあるのに、会話として“使いこなす訓練”が足りない。
このズレが、会議で言葉が出ない原因になります。
ここからは「よく起きる3つの原因」と「すぐできる対策」をセットで整理します。
原因1|即応力の未形成
会話は試験ではありません。
数秒の沈黙が“伝わらない印象”になることもあります。
TOEICの読解のように、考える時間は用意されません。
構文解析→正解探し…の習慣が、返答の遅さにつながります。
まずは詳細な内容よりも、返す速度を優先
例:Yes/No(結論)→ because(理由)→ one detail(具体)
“Yes—because it reduces risk. For example, we can start with a small pilot.”
完璧な英語より、会話が続けられることが大事です。
原因2|雑談の引き出し不足
実務の英語は、試験英語だけでは回りません。
会議前後の「週末どうだった?」「そのニュース見た?」の一言が、関係構築の潤滑油になります。
TOEICでは出ない話題(時事・スポーツ・趣味・生活)で、
言葉が出なくなる人は多いのではないでしょうか。
雑談テーマを3つに固定する
雑談のネタは最初は「広く」ではなく「固定」が効果的です。
- 週末(Weekend)
- 仕事の進捗(Work)
- ニュース・軽い話題(News / Something you saw)
それぞれ “自分の定型文”を3本ずつ作るだけで、会話の入口が安定します。
(例:週末 → “I mostly stayed in, but I tried a new place.”)
原因3|発音・イントネーションの摩擦
TOEICでは、通じる発音かどうかを問われません。
しかし現場では、少しの発音差で聞き返され、流れが止まることがあります。
また、現実の職場では多様なアクセントが飛び交います。
TOEICのクリア音声だけで育つと、実務の“ノイズ”で詰まります。
シャドーイングでネイティブを真似&色んな発音に触れる
- シャドーイング(録音→聞き返し)
- 多国籍アクセントの音源を混ぜる
- まずは 母音+語末子音+リズム だけ狙う
TOEIC LR 900が示す力と、その限界
短く整理しますと、
✅ TOEIC LR900でできること(インプットの土台)
- ビジネス文書・メールをある程度正確に読める
- 会議やニュースの要点を聞き取れる
- 頻出語彙をカバーできる
- 制限時間内に情報処理できる(スピード)
❌ TOEIC LR900でも保証されないこと(会話の主戦場)
- 相手に3秒で返す瞬発力
- 通じる発音・イントネーション
- 会議前後の雑談、関係構築の一言
- 相手に合わせて会話を運ぶ相互作用
- 自分の意見を“自分の言葉”で組み立てる力
つまり、LR900は「理解の強さ」の証明で、会話の即時性・運用力は別物です。
学習で意識したい3つのマインド
ここからは「学習量」より「方向」の話です。
1)「理解できる英語」→「返せる英語」へ
読む・聞くが強い人ほど、次は “返答の型” を持つのが近道です。
まずは短く返し、会話をつなぐことを意識してみましょう。
2)「正確さ」より「反応速度」を優先する
沈黙を避けるために、最初は「70点の英語でOK」にする。
会話は、完璧な文章より 流れ 、理解してもらえることが重要です。
3)試験点数ではなく「体感」で伸びを測る
- 前より会話が続いた
- 聞き返されなくなった
- 自分から話題を振れた
こうした指標が、実務では本当の成長です。
通訳の世界でも同じ構造が起きる
ここまで見てきた通り、会話の壁は「理解」ではなく運用(即応)にあります。
これは、通訳の世界に置き換えても結論は同じです。
「理解」ではなく「運用(即応)」が問われます。
通訳学校の“入口の英語力”については、下記の記事でまとめました。
▶通訳学校に入れる英語力とは?英検1級とTOEICの違い、そして“本当の入口”
“Knowing two languages does not make you a translator/interpreter any more than having ten fingers makes you a pianist.”
2つの言語を知っているからといって翻訳者や通訳者になれるわけではない。
10本の指を持っているからといってピアニストになれるわけではないのと同じだ。
この言葉は、私が通っている通訳学校・サイマルアカデミーの講師が授業で紹介されたものです。
詳しくは、以下の回顧録記事でこの格言を紹介しています。
まとめ:TOEIC900は“地図”。会話はこれから“歩く”
TOEIC900点は、英語学習における「地図が読める状態」です。
でも会話は、その地図を持って 実際に歩くフェーズ に入ったところから始まります。
- 読む・聞く力は十分にある
- 話す・反応する力は、これから伸ばせる
- 「TOEIC900なのに話せない」は努力不足ではなく方向のズレ
焦らなくて大丈夫です。
方向を「試験」から「実践」へ切り替えるだけで、英語は確実に“生きた力”になります。
本記事が、みなさんの学習の参考になれば幸いです。
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このブログを書いている人
社内通訳として働きながら、通訳学校で学んだことをベースに「英語学習の工夫」を発信しています。
シャドーイングやディクテーション、独学の限界など、実践的に役立つ情報をお届けします。




